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「社会保障・税番号大綱」に関する意見

2011年8月5日(金)
 先ごろ政府が公表した「社会保障・税番号大綱」について意見を述べる。

1.導入の理念について

政府は、番号制度を導入する理由として、「国民の権利を守ること。すなわち社会保障給付を適切に受ける権利、種々の行政サービスの提供を適切に受ける権利を守ることにある」と説明している。また、主として給付のための「番号」として制度設計し、低所得で資産も乏しい等、真に手を差し伸べるべき者(本当に困っている国民)を支えていくための社会的インフラとも説明している。

しかし、現在、番号制度がないことで守られていない権利は何なのか?番号制度を導入することでどのように権利が守られるのか?これらについての説明はない。「より細やかな社会保障給付実現」「所得把握の精度の向上」などを挙げているものの、「権利が守られる云々」の説明とはかみ合わない。行政への申請など、国民の利便性が向上するなどのメリットが強調されるが、「番号制度シンポジウムin東京」では結論として「効率の良い行政運営に番号制度は不可欠」「あくまでも行政執行目的で導入すべき」などの説明があったと聞いており、利便が増すのはむしろ行政のみではないか?

また、大災害時にも役立つとして、例えば被災住民が避難所等で自分の氏名、住所などの他、番号を告知することにより、迅速に避難者リストを作ることができると説明している。氏名と住所は覚えていても番号を覚えていなければ避難者リストは作れないことになるのか?氏名、住所、生年月日、性別がわかれば避難者リストを作成することは十分可能と考える。

よって、具体的にどのように国民の権利が守られるのかを丁寧に説明し、改めて導入の是非を国民に問うべきである。

2.国民のプライバシーは守れるのか?

 国民の権利を守ると同時に、国民のプライバシーを守ることも大変重要である。住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が国民のプライバシーを侵害するなどと問題になったが、番号制度は医療や介護の情報、納税の情報など様々な情報を名寄せすることが前提であり、また、民間においての利用も前提とするなど、国民のプライバシーに係わる影響は住基ネット以上に重大ではないか?こと、私たちが関わる医療分野では、患者の医療情報は絶対に漏えいさせてはいけない情報であり、個別法でもって個人情報保護、プライバシーを保護するといっても、政府が大綱に記しているように、情報漏えいが起こりはしないか、情報の国家管理が強化されるのではないかといった不安が常に付きまとう。

 また、政府は番号制度を立ち上げる初期費用だけで6000億円と試算しているが、これだけ巨額の費用を投じても、本当に国民の権利や国民のプライバシー等が保障され、国民一人一人が安心できるシステムが構築できるとは正直思えない。

 そう思わざるを得ないのは、はっきりしない理念をかざし、番号制度の導入ありきで議論を進めているために、番号の使い方は後回しとしているからである。導入すれば「権利を守る」がいつの間にか「権利を抑制し、監視を強める」ことになりかねない。医療や社会保障の抑制に使用する可能性も否定できない。

3.社会保障費抑制につながる番号制度導入に反対する

 番号制度を、医療、社会保障の抑制に使用する可能性が否定できないと考える理由の一つに、「総合合算制度」が盛り込まれたことが挙げられる。大綱では、「番号で医療・介護・保育・障害に関する自己負担の合計額に上限を設けることが可能となる」と説明されている。しかし、現在でも医療と介護の自己負担額を合算して上限を設ける制度はある。番号制度による総合合算制度では、社会保障に関する給付と負担の関係が個人単位で明らかとなる。これは「社会保障個人会計」に他ならない。「多く負担した人は手厚い医療を受けられ、負担が少ない人は給付が少なくて当たり前」という差別化が容易となろう。

 以上、大綱に記された番号制度は多くの問題を抱えており、導入には反対である。