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日本人はアメリカ発の核の平和利用に決別を!!
被爆地広島の被爆者でさえ66年経っても放射能による疾患に苦しんでいるが、放射性物質(プルトニウム)を生成し、放射性廃棄物(死の灰)を排出する原発の危険性の認識がほとんどなく、「平和利用」という言葉に「核兵器」と「原発」は別という意識が根付いている。
一つの例として、2011年3月、広島、長崎の被爆者たちが、被爆体験の証言をイタリア、ナポリの大学で行ったところ、現地の記者に「原爆の被害に遭った日本が、なぜあれほど原発をもっているのか」と質問され、誰一人被爆者は答えることができなかった。被爆者は原子力を戦争に使う核兵器へは座り込みして抗議するが、「平和利用」として原子力は受け入れる。こうした使い分けをしながら日本社会は歩んできた。
敗戦した日本は連合軍総司令部(GHQ)に原子力研究を禁止されていたが、1952年、日本学術会議で物理学者伏見康治が研究再開を提案した。56年、原子力委員会が委員長正力松太郎を委員長として開催された。当時、ノーベル物理学者湯川秀樹、藤岡由夫が入会していたが、原発慎重姿勢の科学者は正力氏と意見対立し退会する。それに引き替え工学者、技術者を中心とした「原子力村」が力を持った。
原子力平和利用の3原則「情報の完全な公開」「民主的運営」「国民の自主性ある運営」が原子力基本法に盛り込まれている。しかし、情報操作と言論統制により、原子力政策決定過程がやがて見えにくくなった。その当時から、哲学者森瀧市郎は「核と人類は共存できない。反原発の運動は人間が核を否定するか、核に人間が否定されるかの戦いだ」と国民に訴え続けた。
1954年3月、ビキニ環礁で第5福竜丸が被爆したことにより、原水爆禁止運動のうねりを生んだ。そこで56年、米国は広島で平和利用博覧会を開催した。反対運動が起こる中、3週間で12万人の来場者を集め、成功裏に終わった。その時、主催者は「日本人の原子力エネルギーへの態度を目覚ましく変えた」、「アイゼンハワー大統領の平和利用構想にこれほど好意的な国がほかにあるだろうか」と米原子力委員会へ報告していた。
政府、御用学者、電力会社の危機管理の不在、原発安全神話、技術立国の過信、有名企業のおごり、保安院など国立機関の専門性と独立性不足から、「国策民営」と呼ばれる日本の原子力安全対策が、電力会社やアメリカ企業と密接な関係をもつ日本のメーカー任せにされてきたため、これまでもその危険性を再三指摘されながら「絶対安全」を言い続けてきた。しかし、1973年から今日まで燃料棒溶解、ウラン溶液の臨界による死者、火災などをおこしたことが、内部告発などでも発覚している。原子力発電はおよそ15件の重大事故を起こしていたが事実の捏造や隠蔽がなされてきた。
東大アイソトープ総合センター長児玉龍彦によると、福島第一原発事故が「熱線量計算では、広島原爆の29.6個分、ウラン換算では20個分の放射性物質を出し原爆汚染よりずっと多量の残存物を放出した」と指摘している。最近になって、原子力安全保安院は「福島原子力発電所1〜3号機から放出された放射性セシウム137が、広島原爆の168個分にあたる」と公表している。
また、児玉氏は、厚労省研究班の母乳検査で福島、二本松、相馬、いわき市の女性からセシウム濃度2〜13ベクレル/1kg検出されているが、この濃度はチェルノブイリの住民の尿中のセシウム137にほぼ匹敵すると忠告している。
日本バイオアッセイ研究センター長福島昭治は、チェルノブイリ周辺住民の前立腺肥大手術で切除された膀胱の病理組織から、セシウム汚染地域住民の膀胱には高い線量でも中間線量でも増殖性の異型性の病変『チェルノブイリ膀胱炎』が起こっていることを発見した。これは膀胱への低い線量でセシウムの長期被曝が引き起こす慢性炎症で、前癌状態であると発言している。そこで土壌汚染をチェルノブイリと福島を比較すると、浪江町、飯館村は高い線量区域、福島市、南相馬市は中間線量区域に入るそうだ。
9月11日で東日本大震災から半年経った。報道の多くは津波による厖大な被害状況である。遺憾なことに、9月8日、鉢呂前経済産業相が、福島第一原子力発電所周辺自治体を「死のまち」と表現した。また、防災服のまま帰宅して都内で記者会見をした際、報道陣に「放射能をつけちゃうぞ」と服の袖をなすりつけるようなしぐさをしたとのこと、これらの言動は、国会議員が「放射能はどんな物質か」ほとんど知識がない話である。
新聞によると、いま現在、放射能汚染された土砂、がれき、冷却水、除汚水、食物などの処理に苦慮している最中であるにもかかわらず、『安全策が認識できれば原発の新増設を認める』自治体が17.3%も存在することは悲しい。自治体は住民が健康被害や、自宅へ帰れないという不幸を真剣に考えているのか。原発事故でいろいろな事件、事象が発生している今日、日本は果たして「平和」といえるのだろうか。
情けない!被爆国でありながら日本人は原子力と共存できるのか?
原子力発電(原発)はウランの核分裂で稼働することにより原子炉内にプルトニウムと放射性廃棄物(死の灰)が生成される。その残った使用済核燃料は、全国の原発で1年間に発生する量が約1000トンといわれている。青森県六ヶ所村の再処理工場で化学処理してプルトニウムを抽出し、MOX燃料を造る予定だったが、完成していない。行き場のない死の灰(ゴミ)は各原発の貯蔵プールに保管されているが、すでにプールの7割が埋まっており、まもなく満杯になる。しかし、このゴミの処理方法は確立していない。
地震学者の神戸大学名誉教授石橋克彦さんは「『福島第一原発の事故は、大津波が原因だ』といわれますが、津波の前に地震の揺れ自体で原子炉に損傷が起き、重大事故が発生した可能性が大きい」と指摘し、さらに、「そもそも日本列島は地球上で原発建設に最も適さない場所で、非常に活発な地震活動帯の中にあり、日本の国土と領海は地球の全表面積の0.3%弱ですが、そこに地球の全地震の約10%が集中しています。また、日本の原発は『地震付き原発』だと言う点でフランスやドイツの原発とは違うんです」と発言している。
また、地震学者からみると、「世界の七不思議」の一つが日本の原発だそうだ。すなわち、世界の原発の所在地は米国も、フランスも地震が1万年起こらないところだそうだ。ところが日本は地震だらけの国なのにまるで地震がないかのように原発を作っている。
でも、日本の原子炉立地審査指針には「大きな事故の誘発となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと」とうたっている。人間の良識、常識から考えても、わざわざ地震や大津波の恐れがある場所に原発を作って運転すること自体、正気の沙汰ではない。
東海原発、福島第一原発の建設に携わった技術者菊池洋一さんは次のように話している。「働いて痛感したのは、原子力の技術が全然確立していなかったのです。原発の内部には重い配管が多数複雑に張り巡らされ、その配管のほとんどは宙づりです。原子炉を運転すると約280度の高温になり、熱膨張で変形するので配管を固定できないのです。福島も浜岡もカプセル型原子炉で、地震で直下から突き上げる力が加われば原子炉内はもちません。また、『原発は5重の壁があるから安全だ』という説明がされていますが、構造を知る者は『5重の壁』は作り話であることを知っています」
今回、地震で配管が破断したとなると、同じような構造で耐震脆弱と思われる原発が日本に10基ほどある。もうひとつ不安材料として原発の「老朽化」で、物理的に耐えられなくなり、破断する恐れがある。
日本の原発は1970年から営業運転を始めた。リスクを伴う「長寿命運転」が多く、54基のうち30年を超えているのは19基、40年を超える原発は敦賀、美浜、玄海と3基あり、10年未満は5基と少ない。電力各社は運転開始時は30〜40年の運転を想定していた。なぜなら、原子炉の鋼鉄は中性子が当たって粘り気を失い、衝撃に弱くなっていく。
今回の福島原発事故で放射能の恐怖が徐々に現実の事として発生している。すなわち汚染された土地、その土地に育った野菜、草木、その草木を食料とする家畜、汚染水が流出した海、その海に棲息する海藻、魚介類に次々と放射性物質(セシウム)が検出され、出荷停止になっている。汚染源は福島第一原発であるが、汚染地域は関東地方まで影響が及んでいる。
放射能は風雨によって遠隔地まで汚染されることを認識せねばならない。九大、東大の研究チームによると、3月11日の原発事故で、3月22日にはスイスで放射性物質が検出された。また、日本原子力研究開発機構は海水中に拡散した放射性物質は3年後ハワイ、5年後米西海岸へ拡散すると予測している。さらに、驚かされることに、政府は福島第一原発の事故処理や放射能への対応に四苦八苦している状態で、世界最高水準の安全性を有すると自負している原発を輸出すると政府答弁書に述べている。だが、輸出した相手国に原発事故が起き、その国民が大きな被害に苦しむ事態になった時、国民も政治家も含めて日本人は、どう責任をとるのか。将来、原爆、原発の材料であるプルトニウムの半減期2万4000年先まで、放射性物質を管理しなければならないことを、想像できるのか。
民意なき国策
3月11日の東京電力(東電)福島第1原子力発電所の事故後、脱原発を国策として決定した。
事故当事者の日本では、今も原発が動き、国会でも脱原発という発言が聴こえず、原発を推進することばかり考えているようだ。7月13日になって、脱原発への多数の民意を受けて、やっと総理大臣だけが、脱原発への方向性を示したが、総理は裸の王様なのだろうか。内閣の支持率が下がり続けているなか、与野党あげて総理の早期退陣を迫り、いのちと健康を守るためになすべき、この国の将来に向けた建設的な意見は出てこない。
停止中の原発の運転再開への合意形成に向けて、政府と電力会社、原発自治体が一体となって動き、国民への説明会では電力会社による原発再稼動賛成投票依頼のやらせメールまで行われている。かつて原発を誘致した地方自治体で行われた公開ヒアリングでの民意の無視は、内橋克人著『原発への警鐘』(1986年発行、『日本の原発、どこで間違えたのか』として2011年4月復刻)に詳しく書かれている。
わが国の原子力研究は、第二次大戦での敗戦で一度は完全に抹殺されたが、サンフランシスコ講和条約締結後、不沈空母発言を行った中曽根康弘代議士(当時)が1954年3月の国会で強引に予算をつけ、正力松太郎という企業家が電力会社を動かして原発を日本に導入した。原子力推進のために国は各種の法整備で電力会社を保護して原子力発電に引きずり込み、国による莫大な補助金交付や電力会社による地元住民や自治体への買収によって、「いのちよりも生活」という地元の合意を強引にとりつけた。
今回の東電福島第1原発事故が起きたことで、全国民は、日本の原子力推進政策の実態を初めて知ったのではないか。なかんずく、唯一の原子爆弾による被爆国でありながら、地震の多発地帯で人口密度の高い島国の日本に、なぜ18ヵ所54基もの原子力発電所が造られているのかという疑問を世界の人々は持っているのではないだろうか。
また、東日本大震災は、千年に一度といわれる天災に加えて、かねてから危険性が指摘されていた原発の大事故という人災のために、5ヵ月経った今なお多くの人々が生活の不安と健康の不安に苛まれながら毎日を過ごしており、その被害はさらに広がりつつある。国民の「不安」という民意をまったく無視した国策によって、多くの国民を被害者とし、世界に死の灰を振り撒いた加害責任を誰もとらず、誰も謝らない。原発推進という国策に民意は一切反映されておらず、一部の研究者、政治家、官僚、財界によって意図的に誘導され、国民には金とウソで作られた安全神話を押し付けるという国策は無残にも崩壊した。
スウェーデンでは1980年に、イタリアでは1987年に国民投票の結果を受けて、原発廃止を国会で議決しており、ドイツとスイスも原発廃止を決めている。デンマークでは1985年に、「原子力は、永遠にこれを放棄する」と議会で公式に決めた。議会には「市民の議論を誠実に聞かなければいけない」という基本的な姿勢があり、新しい技術に対する市民の要求が反映されたものである。
日本では国民投票法と呼ばれるものが2010年5月に施行されたが、これは憲法改正手続法とよばれるもので、憲法改正のためにだけ行われるものである。また小選挙区制度や投票率が50%以下でも選挙が成立するなど、民意、特に少数意見は無視される仕組みになっている。私たちが民意を表すために出来ることは、署名運動、集会やデモ、それに山口県祝島の住民が30年にわたって続けている実力行使など様々ある。もっと便利に、もっと快適にと、際限のない欲望のために、大量生産・大量消費をおしすすめ、食料や贅沢品を世界中から輸入し、狭い国土に新幹線や高速道路を走らせ、いたるところに飛行場を造ってきた日本人は、今こそ一人ひとりの生き方を考え、「足るを知る」という基本に返って、安全と安心を求める民意を前面に出して国を動かすチャンスである。
原発症と原爆症
大震災、津波で福島第一原発損壊という人災が起きた。広島、長崎、ビキニで核エネルギーの被害者となった日本が、今回は加害者となってしまった。
被爆国で地震の多い日本が、なぜ世界第3位の原発を造ったのか世界の人々が疑問を持っており、G8首脳会議では地震国の原発に厳格基準を求めた。国は事故の調査と早期収束、陸地、海洋の汚染対策、子どもと妊婦の避難、定期健診の実施など、住民の健康管理に全力で取り組まなければならない。
事故で拡散した放射性物質は体内に入り込んで内部被曝をきたす。広島では爆心10km地点で多数の被爆者の診療をした医師、看護師たちに脱毛、発癌が起こった例がある。内部被曝の実態はいまだ未解明であり、今後どのような「福島原発症」が出現してくるか予断を許さない。国が内部被曝の実態解明をはかるとともに、コントロール困難な人体にとって危険な核エネルギーから脱却し、再生可能エネルギーへの転換を進めることを、原爆被爆者と私たち広島の医師は強く求める。
29年前から中電は山口県上関町に原発建設を計画し、県知事の許可を得て予定地の埋立工事を始めているが、今回の事故で「地元の皆様の理解を得ることを優先する」として工事を中断している。予定地から30km圏の周南市議会は、計画中止を求める意見書を全会一致で可決して山口県知事に提出した。また、他の自治体も同様の動きがある。瀬戸内海に新たな原発を建設するという無謀な計画に理解を得るべき皆様とは、上関町のみならず、瀬戸内の各県、日本全国、さらには全世界の人々ではなかろうか。
国は原爆症集団訴訟の全面敗訴を受けて、2008年度から審査の方針を改め、積極認定の範囲を1ミリシーベルト以上の被曝とした。すなわち爆心3.5km以内の直爆、100時間以内に爆心付近への入市、その後の入市でも1週間以上滞在した場合に拡大した。また、新たに対象疾患として心筋梗塞が加わった。1ミリシーベルトの被曝でも発癌の原因となる可能性があることを国が認めたことは重要であり、福島原発事故対策に生かされるべきである。
新しい制度による集計では16,839件審査し、認定6,348(38%)、却下6,848(41%)、保留3,643(22%)であった。旧制度での認定率が20%台だったのに比べると、改善されたが満足すべきものではない。
「積極認定の範囲」が適応されたのは悪性疾患のみであり、それ以外で認定された最遠被爆距離は、白内障1.2km、心筋梗塞1.3km、肝臓病1.3km、甲状腺機能低下症1.8kmであった。良性疾患には新たな閾値が設定されている。
新旧制度での認定率を比較すると、悪性疾患では28%から71%に、肝臓病は2.7%から9%に増加し、新設された心筋梗塞は12%であった。逆に、甲状腺機能低下症は31%から19%に、造血機能障害は36%から15%に低下した。さらに視機能障害は申請は12倍に増えたが、認定率は3.2%から3.6%への微増という結果であった。
新たな制度でも却下され納得できない被爆者の中から近畿で8名、広島で12名の方が処分の取り消しを求め訴訟を開始した。協会も参加している「集団訴訟を支援する広島県民会議」は「被爆者支援広島ネットワーク」に改名し、支援を続けることとなった。
2010年12月から厚労省は「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催している。参考人として招聘された伊藤直子中央相談所理事は「原爆の健康影響は未解明の部分が多く、厳密な科学的根拠がないと原爆症と認めない現行制度は矛盾している。全被爆者に年金的性格を持つ手当を一律支給したうえで、病気の人には症状の重さに応じて加算する制度を新設すべきである」と道理にかなった提案をした。被爆者が納得できる原爆症認定制度の早期確立のために、私たちも被爆者と共に運動を継続していこう。
見落としてはならない保険者の責務〜保険料と一部負担金の徴収責任を問う〜
診療報酬改定のたびに思うことであるが、中医協の場では診療側は診療報酬の引き上げばかりに目が向き、保険者の責務について全く言及してこなかったように思われる。本来ならば保険者の責務であるにもかかわらず、逆に国は診療側に対しいろいろな責任を押し付けてきた。その代表的なものが診療明細書の発行の義務化である。
また、以下の事例が会員から寄せられた。
広島県後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」)から診療報酬明細書の返戻予告が医療機関に届いた。これは、後期高齢者医療保険証の一部負担金の割合が前年の所得により判定されるために、判定後に所得修正があった場合は、提出したレセプトと実際の負担割合とが相違することになり、この場合はレセプトを返戻するというものである。医療機関は患者が提示した保険証を確認し、一部負担金を徴収しており、何の落ち度も無い。この返戻予告に対して協会は、即刻広域連合に対し改善を求めた。
この他、4月27日付の読売新聞の報道によると「大阪府の広域連合でも、75歳以上の後期高齢者の旧保険証を約3万人分回収しないまま、3,300人の一部負担金3割該当者を1割負担のまま見過ごしていた」とのことであり、無責任極まりない。
そもそも、現行の医療保険制度は保険者と被保険者の保険契約であり、一部負担金は、本来は保険者と被保険者との関係における公法上の債権債務関係と考えられる。我々は保険者に代わり医療を「現物給付」しており、その点には義務と責任を負うが、一部負担金は保険者による保険給付の一部負担であり、その徴収は保険料と同じく保険者が行うべき業務と考える。健康保険法や療養担当規則に一部負担金の受領についての規定があり、それに従い医療機関が代行しているに過ぎない。また、重すぎる負担が要因となり、患者の受診抑制だけでなく、未収金が発生し、多くの医療機関の経営を圧迫する事態が深刻になっている。未収金については、医療機関が善良な管理者と同一の注意をもって一部負担金の支払いを保険者に求めた場合(電話、手紙での督促だけでなく、内容証明郵便による督促)、保険者が「強制徴収権」を行使し、未収金を回収するという規定がある。医療機関が内容証明までやらなければ保険者は動かない。
残念ながら、今までは日本医師会、歯科医師会が診療側の代表で保険者と遣り合って来たために、責務については触れず一方的に押し捲られてきた感がある。診療明細書の発行については、保険者の責務だと言及すべきであったと思われる。診療明細書を発行すれば多くの患者は内容を窓口で聞くことは容易に想像でき、窓口で混乱することも予想される。その混乱を防ぐために保険者が明細内容を解説したチラシを作製し、徒に窓口で混乱を招かないように手立てを施す義務があること、そして一部負担金の未払いについては、保険者が責任を持つことを診療側は交換条件とするべきであった。
今からでも保険者に対し、国民皆保険制度におけるルールを守り責務を果たすよう要求するべきである。
一部負担金の是非については、またの機会に論じたいと思うが、一部負担金の制度がなければ領収証および明細書発行の必要もなくなるし(現在は負担がない人には発行しなくてもよい)、未収金発生の心配もなくなる。患者にとってもお金の心配なく受診できるし、広域連合も返戻予告の通知を出さなくてもよくなるだろう。こうした声を我々はもっと上げる必要がある。
大きく前進 休業保障制度、新規加入受付再開へ
2005年の新保険業法制定により、非営利の助け合いとして行われてきた多くの共済制度が継続困難となり、現在は先生方の療養を支える休業保障制度も、新規加入の受け付けを見合わせ、給付金の支給のみを実施している。ところがその休業保障制度の運営に、再開の道を開く保険業法の再改定が、2010年11月に可決された。
当会では、2005年の改定法からの適用除外を求め、署名運動や議員要請などに全力を注いできた。当時、金融・郵政担当大臣であった亀井静香氏との懇談が実現し、『会員に限定され、健全に運営されてきた共済を、詐欺紛いの共済と同様に規制することは問題であり、適用除外とすることは当然の対応』との認識を引き出した。亀井氏は同席した担当局長に対し、「早急に方策を講じるよう」その場で指示。再改定に向け舵が切られた。
共済を運営する団体が次々に声をあげ、その連帯の輪は各県懇話会として全国に広がっていった。わずかな期間に8割を超す都道府県につくられた懇話会は、議員懇談や学習会など、多彩な取り組みを旺盛に展開し、多くの懇話会の中心的な役割を担ったのが各地の保険医協会であった。
開業医が倒れた場合、代わって診療を担う者はなく、直ちに休診に追い込まれる。治療を求めて受診する患者さんに対応するために代診を依頼すれば、その費用が必要となり、従業員の給与も保障しなければならない。休業保障制度は、地域医療を担う開業医が、安心して療養に専念できるようにと生まれた助け合いの制度である。「地域のお医者さん、歯医者さん」の療養を保障する制度の必要性が、懇話会活動を通して、多くの団体、議員に共感されていったことを実感している。
「消費者保護」を謳った法改定によって「加入者が不利益を被った」矛盾は大きく、その是正を求める強い要求を受け、保険業法は改定から5年で再改定となった。2011年6月迄の施行を前に、政省令案への意見が受け付けられ(4月10日迄)、いよいよ動き出すことになる。
法律の再改定という結果となったことから、本来の要望である適用除外ではなく、休業保障制度は保険業法下での運営となる。そこには法人格を取得するなど一定の条件が課せられ、団体には制度の法人化などの対応が求められる。しかし、一度決まった法律が見直されるという結果に結びついたのは、全国の保険医協会、団体が、「加入者の利益を守る」ために、粘り強く運動を続けてきたからこそである。
当会・保団連は、異例の救済措置を講じることとなった自主共済が、現状復帰できる形態となるよう、休業保障制度の再開まで追求を緩めず前進していくことを確認した。会員の先生方には、これまでの支援と協力に心から感謝するとともに、引き続きのご協力をお願いしたい。
政府は障害者自立支援法の廃止などの基本合意を守れ
2006年4月より「障害者自立支援法」が施行されましたが、この法の根底の考えに、障害者が社会で普通に暮らす為の支援を「私益」としたことにあります。その為、障害者とその家族の尊厳が傷つけられたとして、障害者は2008年10月31日に廃止を求めて違憲訴訟を起こしました。2009年8月の総選挙で支援法反対の民主党が政権をとったことで風向きが変わり、5回の交渉と2009年12月29日には政府と7時間に及ぶ話し合いを得て、翌2010年1月7日、歴史に残る基本合意が結ばれました。しかし、この基本合意は障害者の人権を中心にし、尊厳を持って生きていく為の最低限のラインであり、出発点に過ぎません。
この内容は5項目からなりますが、要約すると「自立支援法を障害者の意見を充分踏まえずに施行し、障害者の尊厳を深く傷つけたことに対し、心から反省の意を表明し、この反省を踏まえ今後の立案・実施に当たる」、「速やかな応益負担廃止」、「2013年8月までに障害者自立支援法廃止」という内容です。
その約束を実行する為に、内閣府に「障がい者制度改革推進会議」が設置され、そのメンバー24人のうち14人が障害者当事者や関係者から選ばれ、その下に総合福祉法部会も設置され、新法「障害者総合福祉法(仮称)」のあるべき姿や、制定までの「当面の課題」について議論を積み重ねていました。推進会議のスケジュールでは、2011年にほぼ原案を完成させ、2012年前半に新法可決、2013年8月までに新法施行というものでした。
1年前の主張で、私たちはこれらの動きを評価すると同時に、単に形式だけでなく内容面においても当事者の意見が尊重され「法」に反映されるよう求めました。
その後の民主党政権の動きは、後期高齢者医療制度の廃止・介護療養病棟の存続という公約の後退と同じように、基本合意も後退しています。
2010年5月28日に障害者自立支援法の一部「改正」を含む関係法案が、衆院厚生労働委員長提案という形で、わずかな審議時間で民主・自民・公明などの賛成多数(社民・共産は反対)で可決されました。この内容は自民・公明党提案の障害者自立支援法の一部改正案とほぼ同じ内容であり、「廃止と決めた法律をなぜ改正するのか?」という素朴な疑問のみでなく、新法までの「つなぎ法」との説明でしたが、明確に時限立法となっていないばかりか、障害者自立支援法の廃止という文章もありませんでした。
さらに速やかな応益負担の廃止ではなく、「一部応益負担を残存させるのでは?」という危惧がありました。何よりも「障害者制度改革推進会議」、「総合福祉部会」を無視した独善的なやり方に、そのすべての構成員が遺憾の意を表明し、6月1日に参議院本会議において、審議未了で廃案に至りました。総合福祉部会は6月7日に「新法制定前に対応するべき当面の課題」を「障害者制度改革推進会議」に提起し、推進本部長(総理大臣)にも提出しました。
その後、8月〜10月にかけて民主党のヒアリングが行われ、さまざまな意見が出されました。しかし、11月17日に再び上程された法案はこれらのことを何一つ考慮せず、「一言一句変えない」ものであり、ヒアリングはアリバイ作りと批判されてしかるべきものです。わずかな審議時間で12月3日に障害者自立支援法「改正」法案が可決、成立しました。その為、障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会と障害者自立支援法訴訟全国弁護団は厚生労働関係の一部法案が次期国会に持ち越されることの見返りとして、与野党の取引にこの法案が可決されたとし、人権を政争の愚とすることに強く抗議しています。
私たちは「改正」法を本当に「つなぎ」法に終わらせ、「障害者自立支援法の延命・復活」のたくらみを看破し、基本合意を守り、当事者参加によって誰もが安心して暮らせるための新法「障害者総合福祉法(仮称)」の制定を要求します。
将来世代へおろかな選択よりは平和憲法の引き継ぎを
古代より個人や集団、国家間の争いは、現代までどこかで起こっている。相手を思いやる愛を掲げる宗教でさえ異教徒を野獣のように扱い、互いに報復を繰り返している。
かつて日本は、東アジア圏の平和と安定のためという理由で、清国を滅亡した後、新政権が非合法と理屈をつけて中国大陸や東南アジア、太平洋地域で戦争を行った。軍部主導で天皇を現人神とし、絶対権力を保持した。国民総力戦方式を取り、従わない者を非国民として弾圧した。その結果、敗戦後65年経っても、まだ近隣国との間では補償問題が常に持ち上がり、個人対国では、裁判継続中のものも多くある。さらに原爆による後遺障害に苦しむ人も多い。このような戦後処理は今後も世代が変わっても続くであろう。
愚かな戦いを二度としないために、GHQの指示もあったが、日本人の叡智で日本国憲法はできた。憲法第9条は世界で初めて戦争放棄を明記した憲法である。
その後、人口70万人のコスタリカでは同様の憲法を制定し、拳銃を持たない警察官6,000人とコーストガード(沿岸警備隊)2,500人で、軍事費ゼロの平和な国家を営んでいる。日本では、当初の警察予備隊として発足させ、その後現在の自衛隊とし、文部科学省とほぼ同額の費用を費やしている。しかも中東での軍事援助を積極的に行ってきた。
ところが、コスタリカでは、大統領がアメリカのイラク派兵を支持する声明を出しただけで、1人の国民からの提訴で裁判所は大統領を憲法違反とした。
日本では、60年以上経って、なお戦後処理が終わっていないのにもかかわらず、かつての戦争の初期段階と変わらない行為をやり始めた。しかも防衛庁を省に格上げし、米国から時代遅れの戦車や試作品と思われる戦闘機を大量に購入している。米国は農業と軍需産業が経済基盤の国のため、世界のどこかに紛争があれば、そこに武器を投入し、戦後は農作物を補助することで経済が成り立っているとも考えられる。日米安保条約が存在するため日本はクレームを付けない、値切らない安定顧客の役を演じてきた。もうこれからは独自の平和理念を掲げて他国をリードすべき時が来ているにもかかわらず、マスコミは東アジアの不安要素をあおりたて、それに乗じて憲法改正を行おうとする政界と財界の意見を正論とする報道も増えてきている。
戦争の最大犠牲となった沖縄には日本国憲法9条の碑が6ヵ所ある。また、スペインのカナリー諸島のテルデ市にはスペイン語訳された憲法9条の碑が、市長提案により、全市民が賛同して建立されている。ぜひ、広島にも憲法9条の碑を建てたいものである。
日本人はのどもと過ぎれば熱さを忘れたのか、憲法改悪を主張して同じ過ちを繰り返す可能性が限りなくゼロから増えつつある。世界に誇れる憲法9条を守ることは将来世代への遺産のはずだが。
※憲法9条の碑(那覇市与儀公園、読谷村役場、西原町役場、石垣島新栄公園、宮古島市カママ嶺公園、南風原町鎮魂の広場)
患者負担軽減策の一試案
日本の医療費は毎年約1兆円づつ増加しています。しかし、その多くは医療従事者の人件費には回らず、設備費や医薬品費・材料費にまわっていますが、このことを多くの国民は知りません。病院経営者(医師)は他院との競争に負けることを恐れてか、最新設備の導入に熱心です。多くの経営者はこれを“医療の進歩”と呼び、設備投資は当然のことととらえています。これにより患者負担が増加し、必ずしも患者の利益になっていないばかりか、設備の稼働率を上げる必要から医師・スタッフの過重労働の原因になっています。
最近、患者の医療機関への受診拒否や治療の中断が多くみられ、重症化・難治化の原因ともなっています。高額の検査や医薬品の負担が所得の伸び悩んでいるなか、医療費の自己負担率3割分が重荷になっていると思われます。保険医協会は、従来より自己負担の低減を訴えてきましたが、なかなか実現しません。一方、高齢化による保険財政の悪化もみられます。3割の自己負担はあまりに重く、もっと医者にかかりやすくなるよう、患者の診察料への自己負担を軽減し、全体に先行して1割に低減することを提案しています。薬剤料・検査料の自己負担はとりあえず据え置きとしますが、この政策により次のような変化が予測されます。
@比較的軽い症状でかかりつけ医を受診し、高額の検査や医薬品の必要度が減る。
A医師の指導のもと、薬への依存を減らし、生活習慣の改善により病気の克服を目指す。
B必要度の低い薬の処方を医師に求めないようになる。
C医師は患者負担を考え高額の検査実施に慎重になる。
D長期処方にも慎重になる。
E高額の設備投資に慎重になる。
結果として軽症の患者を重装備の病院から軽装備の診療所に誘導することになり、病院外来の合理化にも寄与します。総額での医療費は減少し、患者さんにとっては医療費の負担が減り医師にかかりやすくなります。かかりつけ医の患者数は増加し、病院の外来患者は減少し、医師は、紹介患者・重症患者・得意分野に専念することによって設備費や人件費を削減可能となり利益の増加が期待できます。また、保険者にとっても医療費の削減が期待できます。
以上のいずれの当事者にとってもメリットがあると思います。日本は諸外国に比べCTやMRIが多数設置され、医薬品費や医療材料費にも多くの費用がつぎこまれています。このことを改めなければ、いくら医療費を増額しても医療関係者の所得は増えず、患者負担ばかりが増えるのではないでしょうか。
産業空洞化を止めなければ安心社会は来ない!
小泉政権の規制緩和により、企業や社会に日本本来の倫理観がかげり、企業・社会格差は拡大した。また、疾病は自己責任で対応するよう提唱され、社会保障費を毎年2200億円抑制されてきた。まさしく自公政権は人間を道具のごとく使い捨てにする弱肉強食の新自由主義を作った。その結果、雇用、経済情勢が悪化し、自殺者は年間3万4000人にのぼり、日本の貧困率(15.7%)は、世界一になった。
この時代は、新たに非正規雇用形態が確立し、2007年に約1732万人に達し、全雇用者の3分の1を占めた。年収200万円以下の層が1100万人で、労働者の25%になっているワーキングプア、すなわち「働けど働けど暮らしが楽にあらず」という悲しい状況も生んでいる。さらに、09年には生活保護世帯が120万人以上と過去最高を記録した。
経済財政白書によると、09年の企業内失業(生産に見合った際的な雇用者数と実際の常時雇用者数の差)が最悪の607万人になった。また、年収300万円未満の雇用者が50.2%まで増加した。そのため最低賃金労働者が生活保護世帯より収入が下回ってきた。
さらに、世界のグローバル化により、国内の自動車、家電などの企業はインド、東南アジア、中国に海外逃避に走り、国内雇用の減少につながった。求人倍率は0.4〜0.5倍と雇用環境は厳しくなっている。この状況を「産業の空洞化」という。すなわち、労働者はいるが、働く場がない状態である。
アメリカのオバマ政権下でも、企業の中国移設により、産業の空洞化が表面化し、先の中間選挙で民主党大敗になっている。
また、日本では、この空洞化は、教育、医療にも大きく影響している。日本の教育への公的支出は、経済協力開発機構(OECD)によると、07年にGDP比3.3%と主要28ヵ国中(平均4.8%)最下位である。また我々に関係する医療では、09年の公的支出がGDP比6.6%とドイツ(8.0%)、フランス(8.7%)のヨーロッパに比べて低いため、患者の窓口負担が1〜3割と高くなり、賃金収入に占める医療費負担が多い。そのため、検査・治療の中断、中止が多くなることにより疾病が重症化し、生命の危険にさらされるリスクが増すことになる。逆に国の負担する医療費が多くなる。受診できない理由として、「自己負担が高い」と答えた人が38.4%もいる。広島県保険医協会の医療機関へのアンケート調査でも中断、中止例が医科で29.9%、歯科で55.6%発生している。
企業は国内から成長が期待できる新興国に生産拠点を移す動きを活発化している。その結果、国内では企業数が減少し、その上企業が新たな投資に慎重で、手元資金が積み上がっている。日銀の統計によると、民間企業の預金残高は200兆円を超えている。
国は空洞化対策の一環として、1つは、法人税減税を目指している。しかし、海外流出した企業は法人税を下げても日本へ回帰する気はなく、帝国データバンクの調査では、「減税分は内部留保に充てる」(25.0%)、「借入金の返済に充てる」(16.8%)と言明しており、雇用や設備投資に充てるという企業は少ない。
2つ目として、国は09年4月に導入した海外での利益・海外子会社から受け取る配当(海外利益還流)の95%を非課税扱いにし、国内の設備投資や研究開発、雇用の拡大を期待したが、効果を発揮していない。
我々は、空洞化対策として、企業は国内での正規雇用を増やすために内部留保を使うことを主張する。すなわち、雇用が増えれば消費も増え、庶民生活は再建され、経済の足腰が強くなり、財政再建につながってくる。なかんずく、広島でも非正規雇用者を正規雇用にする企業がある。
国は医療費をヨーロッパ並みにし、企業は国民が安心、安全に暮らせる社会を作ることに貢献することを切望する。
デフレ経済下での福祉政策はいかにあるべきか
また地価が下がった。日本では19年連続して地価が下がり続けている。デフレが止まらず、成長率も伸びず、財政赤字も膨らんで、国の借金は900兆円を超えた。ある国の通貨が高くなるのは、その国の経済力が伸びたときだが、現在の日本の経済力は決して伸びているとは言えないだろう。
デフレ経済を立て直す方策として、ケインズの経済理論というのがある。イギリスは19世紀末から20世紀初めにかけて、産業革命で産業が伸びた後、ドイツ、アメリカなどの追い上げにあって、大不況が到来した。この時代を乗り切る方策としてケインズの理論が登場する。
そこで、ケインズが指摘したことは財政政策の柱として公共資産中心の考えであった。イギリス中央銀行の金融緩和ではデフレは解消されなかった。その理由は、中央銀行がいくら貨幣供給を増大させてもかなりの部分が外国に出てしまった。国内に投資先がなければ、貨幣はただ海外に流出するだけだった。あたかも現在の日本を見ているかのような話である。
ケインズの時代では、デフレの克服には公共投資が一番有効のようであった。
しかしながら、現在の日本の状況では公共投資が有効ではなく、まず内需拡大と雇用の創設であり、福祉を拡充させながらのデフレからの脱退である。
菅政権の取り組みもこれを考慮に入れて、内閣発足直後の6月18日、新成長戦略を閣議決定した。従来の公共事業中心の経済政策を否定し、第三の道として、強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現することを掲げた。まさしく高保障、高負担の考えである。
さらに6月30日に発表された経済産業省の医療産業研究報告には、「公的保険制度の枠外の自由な市場での資本蓄積や技術革新の基盤整備を実現し、自律的な成長を可能とする医療の産業化」を提唱している。これこそ市場原理導入で、投資としての社会保障の考えである。しかし、儲かる社会保障というものがこの世にあるのだろうか。
グローバル化の中で、考えられている方策の向こうには@混合診療の拡大、A医療ツーリズム、B健康関連サービス産業の拡大が見える。
この方策が実行されるかどうか、十分注意して見守る必要がある。まずは、国民が広く恩恵を受けられる医療や福祉が実行され、さらに国民の負担を軽減する方向を考慮しながらデフレが解消される方策を図るべきではないか。
社会保障や福祉には基本的に財源を応能負担した税から持ってくるべきで、福祉の中に市場原理を導入すべきでない。基本的に社会保障とか福祉の領域は営利産業でないと考えるべきである。
衆院比例代表制の定数削減は日本の進路を誤らせる
菅直人首相は、「ムダ削減」として衆議院の議員数が多いと、比例区で80の定数削減を目指しています。日本の衆議院議員(定数480人)は議員1人当たりの人口は約26万人で、二院制を採用している欧州各国の下院議員1人当たり6万人〜13万人と比較して決して多くありません。仮に衆院比例代表制の定数を80削減しても、経費として削減できるのは56億円に過ぎません。
国会議員は国民と国会とを結ぶ重要なパイプ役です。中選挙区制を採用していた時代は、各政党の得票率とそれに伴う議員数がほぼ近い状態にありました。少数政党の躍進が起こり、危機感を感じた財界・支配層はこれを抑え込むため、二大保守政党制づくりを目指し、当時の細川内閣は選挙法を改定し、小選挙区比例代表並立制が1994年に導入されました。細川内閣は「民意を集約する」小選挙区(300議席)と、「民意を反映する」比例代表制(200議席)を組み合わせることで「両方を補う」と説明してきました。同時に企業献金の廃止を約束してきました。
2000年2月には、比例代表制を20減らし、180議席として、少数政党に影響を与えました。すなわち、衆議院の小選挙区を見ると、05年選挙では、自民党は296議席(小選挙区で得票率47.8%で219議席)で議席占有率は73%。09年は119議席の7割は得票率38.7%で得たものです。大勝した民主党は308議席(小選挙区の得票率47.4%で221議席)で議席占有率は73.7%です。
一方、小選挙区での死票は05年で3300万票(48.5%)が09年では、3270万票(46.3%)となっています。
このように民意を反映しない「虚構の議席多数」で自民党・公明党は、高齢者の医療負担増(70歳以上1割から2割負担)、社会保障費の自然増2200億円削減、健康保険法改悪(本人2割から3割負担)、有事3法、労働者派遣法改悪、イラク特措法、年金法改悪、郵政民営化等の悪法を9回の再議決も使いながら次々と成立させています。
しかし、政権交代で民主党は沖縄米軍基地の強化、アフリカ・ソマリアへの自衛隊派遣を決め、野党時代に反対していた後期高齢者医療制度廃止を先送りするなどして、国民を苦しめている財界とアメリカ優先の政治から国民主体の政治への変換を求める国民の声に耳を貸そうとしません。今、民主党は比例区を減らし100議席にしようとしています。09年選挙の結果をあてはめると3分の2以上の議席獲得になり民主党は一党独裁の形態になります。
憲法は前文の冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し・・・」と国民の多様な意思が国政に反映される選挙制度を求めています。憲法43条は「両議員は、全国民を代表する選挙で・・」とあり、国会議員は少数者をも含む全国民の意思を公平・平等に代表されるべきです。憲法14条(法の下の平等)、憲法15条(国民の固有の権利としての参政権)にもその精神は貫かれています。衆参両院の採決は同等の力を与えています。
OECD(経済協力開発機構)加盟32カ国のうち、日本の衆議院にあたる下院のすべてが小選挙区制という国は、イギリス、アメリカ、フランス、カナダ、オーストラリアの5カ国にすぎません。民主党が議会の「モデル」としているイギリスでは小選挙区制の見直しの動きが出ています。選挙制度の良し悪しを測る最大の基準は、全国民の意思を正確に議席に反映するかどうかです。その制度は比例代表制です。
また、ムダを省くために政党助成金(年総額約320億円。イギリスでは上限が約2億9200億円とされ、使途も政策立案活動に限定。アメリカには制度がなく、イタリアは1993年に制度廃止)を廃止することとともに、被選挙人が選挙に参加しやすくするために、選挙供託金制度(衆院小選挙区300万円、参院比例区300万円、参院比例代表1人600万円。イギリス10万円、カナダ8万円、アメリカやフランスは制度そのものがない)を廃止することが必要と考えます。
原子力発電はクリーンで安全なエネルギーではない
8月に入るとマスコミを賑わす記事に原爆関連がある。
今年は、原爆投下65年目と1つの節目になったが、広島の平和記念式典には、国連の藩基文事務総長、また、初めて米国の大使が出席、さらに核保有五大国である中国以外のフランス、イギリス、ロシアをはじめ74カ国の大使、公使が出席した。
世界にはおよそ2万2350発の核兵器があり、被爆国の日本は65年前、2発で22万人の人間が死んでいる。現在の核兵器は、日本に投下された原爆の数千倍も威力の強いものであるから、世界中の人間が壊滅的な打撃を受け、被爆国民だけでなく、投下した国民も死に追いやられる状況である。このような核兵器の恐怖については、日本国民だけでなく、世界の国々は実感として程度の差こそあれ、理解しているだろう。
一方、安易に考えられているのが原子力発電(原発)である。数年前から世界的にクリーンエネルギーの旗印として崇めるかのように、日本をはじめ、中国、インドなど原発開発政策をとり始めた。また、原発を危険で金がかかるという理由で建設減少傾向にあったヨーロッパでも建設を進めるようになっている。
日本の原発は軽水炉がほとんどで、新しく高速増殖炉もんじゅを1991年に建設し、試運転を始めたが、95年にナトリウム漏れを起こした。もんじゅは熱効率を高めるために水や空気に触れただけで爆発するナトリウムを使用するので危険である。また発電力は、軽水炉の1/3以下なのに建設費だけでも倍の6000億円かかっている。運転トラブルや経済的な理由で欧米ではほとんど運転をやめている。なのに何故、日本は2050年頃を目標に本格的な炉建設計画をたてているのか。それは資源の有効利用と毎年30個の原爆が造れる高純度のプルトニウムが約1.2倍に増やせるから一石二鳥と考えている。しかし、最近はエネルギー不足に直面する新興国、特に中国、インドがこの高速増殖炉の開発に熱心であるが、インドの開発現場を視察して「安全対策が不十分」と心配する研究者もいる。その上、核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに原発を売る日印原子力協定を締結しようと交渉している。
現在日本には13道県17ヵ所の原発があり、西日本(島根県、佐賀県、鹿児島県、愛媛県)にも存在するが、運転によって出る低、中、高レベル放射性廃棄物の管理は電力会社ではなく、国が責任を持つことになっている。一旦、ロシアのチェルノブイリ級の原発事故が起これば、西日本には人間が住めなくなると言われている。また、日本は地震国で国土のいたるところに活断層があり、その活断層の上や近隣に原発が建設されている。その上、放射性廃棄物を保管する場所がないため、発電所の敷地内にドラム缶に入れ貯蔵施設に保管している。現在、80万本のうち、青森県六ケ所村に20万本が埋入されている。しかし、大地震が発生すれば、廃棄物は地中にしみ込み、同時に地表にも露出する可能性が大きい。さらに造られた物は寿命があり、日本に2基の原子力発電所が寿命を迎えている。高レベルに汚染された原子炉の解体は税金で行われるが、解体作業での被曝や解体後に出る多量の放射性廃棄物の処理が問題である。
国や電力会社の原発への危険性・安全性に対する認識が低いため、今後どのような事故が起こるか不安である。65年経っても被爆者が原爆症で苦しんでいる原爆と同様に、原発も放射能でDNAが傷害され、将来に亘って子孫に影響が出ることを忘れてはならない。
国は「原発はCO2を出さない」と報道しているが、水の中に溶けているCO2は水温が上昇すると空気中に放出してくる。軽水炉原発により排出される温水は7℃上昇すると言われている。現在日本に54基運転し、年間1.1億トンのCO2が空気中に放出すると計算している科学者もいる。また、全国の自動車の排出量は約2億トンで原発は自動車の半分近くになり、決してクリーンエネルギーとして崇められる発電ではない。
日本では「核・軍事利用」と「原子力・平和利用」は違うものであるかのように宣伝されているが、これら2つには原子核、核分裂、放射能という恐ろしい共通項があり、被爆国日本の認識は非常に危険である。
GNHの四つの柱
このたびの参議院議員選挙で、民主党と国民新党の与党は大敗し、自民党が第一党となるという逆転劇が繰り広げられた。国民は昨年の政権交代が、日本の民主主義への第一歩だったということが残念ながらわかっていなかったようだ。自民党中心の政権は、政・官・業(鉄の三角、裏にアメリカの存在)が国民から搾取するという政治だった。これに代わった民主党中心の政権は、労働者(労働組合)が市民の代弁をする政治であり、次に来るべき政権は、国民の国民による国民のための政治、つまり本当の意味での民主主義を担う政権が期待された。だから、歴史を後戻りさせてはいけなかったのだ。
わずか10ヵ月あまり前、長年の自民党中心の政権が自分たちの意識からかけ離れているということがやっとわかった国民は、衆議院議員選挙で投票意識を変えて政権交代を実現させた。ところが選ばれた民主党中心の政権は、国民の期待に反して選挙中のマニュフェストは財政難を理由にあっさり捨て去り、自民党中心の政権と変りばえのしないものになってしまった。つまり国民の意識の変化がわかっていなかったのだ。あいかわらず金権政治が行われ、国にとって何が大事なのか、この国をどんな国にしたいのかというビジョンがなく、あるのは国民や支持団体の顔色をうかがいながら、結局はアメリカと財界の顔色をうかがう政治だった。
さて、ブータン(王国)というインドと中国にはさまれた南アジアの小さな国は、世界一幸福度の高い国として知られている。ブータンの国王は先進国の歴史を研究した結果、GNH(国民総幸福度)を国の開発政策の理念として打ち出した。GNHとは、物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさも尺度に入れた「幸福度」を表す考え方だ。ブータンでは憲法でGNHを国の基本に据え、「持続可能で公平な社会経済開発」、「有形・無形文化財の保護と推進」、「自然環境の保護」、そして「よい統治」の四つの柱に基づいて国が運営されている。2005年の調査では、ブータンの国民の97%が幸福だと感じているという結果が出た。生活満足度の調査では、ブータンでは60%以上の人が「満足している」と回答したのに対して、日本ではわずか10%だった。
最近、日本でも「幸福度」を指標化して政策に反映させる試みが提案されており、国民の意識を変えれば日本もGNHの高い国になれる。
日本には何よりもまず世界に冠たる憲法第9条があり、また憲法第25条もある。まず、これらを遵守することがGNHの高い国への道である。また、いつまでもGNPの増大(経済成長)を追及しないで、成熟した経済、さらには小さく成長する経済、つまりむしろ縮小する経済を追及する時代なのだ。これからの世界は、人口問題、食糧問題、環境問題、核兵器の問題、世界平和の問題などを克服していかなければいけない。そのためには、まず真実を知るということが大切だ。例えば、多額の借金があるとはいえ日本は、世界経済の一割を担う大変豊かな国で、世界は決して日本を財政破綻国家とは見なしていない。また、原子力発電所も米軍基地も必要ない。電気は不足していないし、在日米軍は抑止力とはならない。そのうえどちらも危険きわまりないもので、都会には造れないために巨額のお金を使って地方におしつけている。日本は、今後GNPよりGNHを重視して、ブータンがGNH増大のために掲げる政策の四つの柱を見習わなければならない。
参考:『幸福王国ブータンの知恵』『ブータンに魅せられて』
核兵器廃絶と米軍基地撤去は達成すべきゴールである
オバマ大統領のプラハ演説を契機に、核廃絶を求める国際世論が高まる中で開催されたNPT再検討会議は「核兵器の完全廃絶に向けた具体的措置を含む行動計画に取り組む」ことで合意した。素案にあった「2011年までに核保有国は核削減の交渉を開始し、14年に核廃絶の行程表を決める国際会議を開く」という具体的計画は核保有国の反対で削除されたが、長期的なビジョンとして「核兵器禁止条約」が、最終文書としてはじめて盛り込まれており、5年前の会議がなんら成果なく終了したのに比べると、今回は大きな成果があった。鳩山前首相、岡田外相は出席しなかったが、被爆者は過去最多の100人以上が参加し、国連本部1階ロビーで開催した原爆パネル展をはじめ、市民交流の中で被爆の実相を語り、核兵器廃絶を訴えて大きな役割を果たした。今後、核廃絶の具体的道筋を開くため、私たちも被爆地広島の医師・歯科医師として行動していこう。
米海兵隊岩国基地では騒音削減を求める市民の声に応えるとの大義名分で、2500億円をかけて1キロ沖に移設した新滑走路の運用が始まった。岩国は厚木基地から空母艦載機59機の移転が予定されており、極東一の航空基地になろうとしている。愛宕山地域開発事業で2000万立法メートルの土砂が埋め立てに使用され、愛宕山は広大な台地に変身した。当初の宅地開発計画は破たんし、一部に国立病院が移転するものの、大部分を防衛省が買い取って移動してくる海兵隊員用の住宅を建設しようとしている。これ以上の基地負担は我慢できないと、5月23日(日)に「米軍再編を認めない岩国大集会」が開催され、激しい雨の中4000人の「怒」の市民が集まった。新滑走路が使用されると宮島から広島上空を飛行することが予想され、平和都市に爆音が響くことになる。母艦の原子力空母が瀬戸内海を航行する可能性もでてくる。私たちも岩国市民とともに基地拡大反対の声をあげていこう。
民主党政権の誕生で米軍基地撤去の流れが生まれることが期待された。しかし、鳩山前首相は普天間基地移転先を「国外、最低でも県外」とし、「海の埋め立ては自然に対する冒涜」と言ってきたのを翻し、「日米同盟の深化」を最優先して、県内たらいまわしの末、前政権が決めた辺野古に決定した。沖縄県民の期待を裏切り、筋を通して閣内署名を拒否した福島社民党党首を罷免した鳩山前首相の評価は地に落ちた。政権担当能力がないことを国の内外に露呈し、政治とカネの問題とも相まって任期を全うすることなく辞任した。参院選挙を間近に控えて後を継いだ菅首相も日米合意が最優先で、辺野古移転は既定の方針との考えを示している。
沖縄の経済は、かつて基地からの収入が15%を占めていたが、いまは5%に過ぎない。観光収入は逆に5%から10%に増加している。基地は地域振興の足かせとなっており、身近に米軍基地が来ることをのぞむ市民はいない。日米安保体制の継続の中で米軍の不沈空母の状態が続いていること自体、独立国家としては不適切である。日米軍事同盟を解消し、核の傘から出て、憲法九条を守り、近隣諸国との平和友好関係を前進させるべきである。
沖縄では県民をあげて辺野古への移転を阻止し米軍基地の国外移転を求める運動が持続される。私たちもこの運動に連帯して米軍は日本から出ていけとの声をあげていこう。
65回目の8月6日が近づいてきた。今年の平和記念式典には、国連の藩基文事務総長が参加を予定している。藩氏はNPT再検討会議の場で「核廃絶は達成できないゴールではない。政府を動かすのは皆さんの力です」とNGO参加者に呼びかけた。今回のヒロシマ訪問では、市民との対話の場の実現を望みたい。
見落としてはならない保険者の責務〜保険料と一部負担金の徴収責任を問う〜
診療報酬改定のたびに思うことであるが、中医協の場では診療側は診療報酬の引き上げばかりに目が向き、保険者の責務について全く言及してこなかったように思われる。本来ならば保険者の責務であるにもかかわらず、逆に国は診療側に対しいろいろな責任を押し付けてきた。その代表的なものが診療明細書の発行の義務化である。
また、以下の事例が会員から寄せられた。
広島県後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」)から診療報酬明細書の返戻予告が医療機関に届いた。これは、後期高齢者医療保険証の一部負担金の割合が前年の所得により判定されるために、判定後に所得修正があった場合は、提出したレセプトと実際の負担割合とが相違することになり、この場合はレセプトを返戻するというものである。医療機関は患者が提示した保険証を確認し、一部負担金を徴収しており、何の落ち度も無い。この返戻予告に対して協会は、即刻広域連合に対し改善を求めた。
この他、4月27日付の読売新聞の報道によると「大阪府の広域連合でも、75歳以上の後期高齢者の旧保険証を約3万人分回収しないまま、3300人の一部負担金3割該当者を1割負担のまま見過ごしていた」とのことであり、無責任極まりない。
そもそも、現行の医療保険制度は保険者と被保険者の保険契約であり、一部負担金は、本来は保険者と被保険者との関係における公法上の債権債務関係と考えられる。我々は保険者に代わり医療を「現物給付」しており、その点には義務と責任を負うが、一部負担金は保険者による保険給付の一部負担であり、その徴収は保険料と同じく保険者が行うべき業務と考える。健康保険法や療養担当規則に一部負担金の受領についての規定があり、それに従い医療機関が代行しているに過ぎない。また、重すぎる負担が要因となり、患者の受診抑制だけでなく、未収金が発生し、多くの医療機関の経営を圧迫する事態が深刻になっている。未収金については、医療機関が善良な管理者と同一の注意をもって一部負担金の支払いを保険者に求めた場合(電話、手紙での督促だけでなく、内容証明郵便による督促)、保険者が「強制徴収権」を行使し、未収金を回収するという規定がある。医療機関が内容証明までやらなければ保険者は動かない。
残念ながら、今までは日本医師会、歯科医師会が診療側の代表で保険者と遣り合って来たために、責務については触れず一方的に押し捲られてきた感がある。診療明細書の発行については、保険者の責務だと言及すべきであったと思われる。診療明細書を発行すれば多くの患者は内容を窓口で聞くことは容易に想像でき、窓口で混乱することも予想される。その混乱を防ぐために保険者が明細内容を解説したチラシを作製し、徒に窓口で混乱を招かないように手立てを施す義務があること、そして一部負担金の未払いについては、保険者が責任を持つことを診療側は交換条件とするべきであった。
今からでも保険者に対し、国民皆保険制度におけるルールを守り責務を果たすよう要求するべきである。
一部負担金の是非については、またの機会に論じたいと思うが、一部負担金の制度がなければ領収証および明細書発行の必要もなくなるし(現在は負担がない人には発行しなくてもよい)、未収金発生の心配もなくなる。患者にとってもお金の心配なく受診できるし、広域連合も返戻予告の通知を出さなくてもよくなるだろう。こうした声を我々はもっと上げる必要がある。
保険医年金・グループ保険の活用を
民主党を中心とする政権ができ、医療費の総枠拡大や後期高齢者医療制度の廃止などが期待されましたが、診療報酬についてはわずかなプラスで、先発医薬品から後発医薬品への置き換えを差し引くと、限りなくゼロ%に近い内容です。医院経営がますます厳しくなった今こそ、事業資金、教育資金、住宅資金、医療・介護費用などの必要資金を踏まえ、ライフプランを考え直すことが重要です。そこで万一に備え、保険・年金の見直しが必要となります。
協会・保団連は、その組織力を生かして、会員の先生方の老後保障の充実を目的とした制度として、1968年保険医年金を創設し、今日では日本最大規模の私的年金として発展しています。
この制度の優れた特徴は、1人最大30口(掛け金1口1万円)まで加入できる大型年金で、加入者のライフプランに合わせて、増口はもちろん、掛け金払い込みを一時停止することができるなど、自在性と柔軟性に富んでいることです。受け取り方法も年金として4種類(定額型10年確定年金、定額型15年確定年金、逓増型15年確定年金、逓増型20年確定年金)の中から選択できます。2009年9月1日からの予定利率は1.256%になっており、最低保証利率のない他の金融商品等より安定した制度であることはもちろん、制度発足以来、年金受給を開始された会員の方の受給額を削減したことはありません。加入者約6万人、責任準備金が1兆1千億円を超える保険医年金は、そのスケールメリットを生かして生保手数料を拠出型企業年金保険の中では最も低い金額に抑え、その分を加入者の積立金に回るよう運営しているほか、生命保険会社まかせにせず、各社の経営状況分析や制度改善などに取り組んできました。
協会・保団連は、保険医年金が加入者の先生方にとってより良い制度となるように、引き続き受託4社(三井、明治安田、富国、ソニー各生命保険会社)とともに保険医年金制度の発展に努めてまいります。会員の先生方には、老後への備えはもちろんですが、様々なライフスタイル、ライフプランに応じてご活用いただけるものと確信しております。この機会にぜひご加入いただき、長期にわたって上手に保険医年金を利用されることをお勧めいたします。
また、万が一の遺族保障には、ぜひグループ保険を利用してください。この保険制度は掛け金をおさえて高額の保障が得られますので経費の節減になり、診査なしで70歳まで加入でき、継続加入は75歳まで可能です。掛け捨て保険ですが、年度毎に収支計算を行い、余剰金が生じた場合は配当金がでます。「500万円×法定相続人の数」までは非課税ですので、相続税対策にもなります。また、一年毎の更新ですので、生活の必要資金に応じて毎年見直しができます。この制度は加入会員数を、加入資格を充たす会員数で割った加入率により運営を認可される保険で、広島県保険医協会のグループ保険は基準加入率を上回り、安定運営を行っていますので、安心して加入できます。
経費の節減と将来設計を今こそ再検討する必要があるのではないでしょうか。4月1日からの普及期間は、普及員証を持参した委託生保職員が、ご加入をお勧めに伺うことがありますので、その節はご対応をよろしくお願いします。
総合的な障害者福祉法をめざして
2006年4月1日より実施された「障害者自立支援法」は、医療や介護と同じように「応能負担」より「応益負担」になりました。この根底には障害者が社会の中で普通に暮らす為の支援を「私益」とし、負担を強いるのが当然とした考えがあります。この法は「国連障害者の権利条約」(注)に反しています。
この法律のため、支援を減らし「生きること」を切り詰めた人も多く、小規模の作業所は存亡の危機にさらされています。そして何よりも障害者とその家族の「尊厳」を傷つけることになりました。そのため全国の障害者ら71人が14地裁で障害者自立支援法は憲法13条、14条、25条などに違反しているとし、廃止を求めて違憲訴訟を起こしました。
その流れの中で鳩山首相は、09年10月26日の臨時国会で、「障害者自立支援法」の早期の廃止を所信表明しました。そして今年1月7日に、国(厚生労働省)は「この法が障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたこと」に反省の意を表明し、訴訟の原告・弁護団と同法を13年8月までに廃止し、新しい障害者福祉法を作ることで合意したのです。
さらに「新法制定に当たっての論点」として、支給量の保障、介護保険優先の廃止、施設の食費などの負担見直し、支給決定の過程に障害者が参加することが挙げられ、「当面の措置」として、4月から市町村民税非課税の障害者の福祉支援や車椅子などの自己負担を無料にする(約40万人が対象)ことが決まっています。そして順次訴訟は和解が成立してきています。
自公政権に変わる民主党中心の政権に変わったことも理由にありますが、私たちは何よりも障害者や関係者をはじめとした国民の広範な運動の成果として評価し、それらの事項が1日でも早く確実に実施されることを望みます。
その中でも特に急がれることがあります。1つは待ったなしの状態にある小規模作業所への援助です。小規模作業所とは通所型の授産施設や更生施設の最低利用定員である20人を下回っている、いわゆる「無認可」の社会福祉事業所のことです。長期にわたって国が公的な援助を放棄したため、自治体の援助で全国に設置され、5870ヵ所(05年8月1日現在、きょうされん調べ)に及びます。障害別に設けられている認可された通所授産施設が2726ヵ所(04年1月1日現在、厚労省調べ)であることをみれば、小規模作業所がなくてはならない存在であることは明らかです。都道府県より1ヵ所あたり約400万円の年間平均補助額がありましたが、自立支援法で財政責任のあいまいな地域勝号支援センターを制度化したため、約5割の道・県が小規模作業所補助金制度を廃止してしまいました。もう1つはその他の障害者の施設への、給食費の自己負担の撤廃、障害程度区分基準の撤回、施設への報酬を増やし、日単位より月単位に戻すもことなどを、緊急の策として要求します。
これらの施策はさらなる予算が必要とされますが、国内総生産に占める障害者関連施策への公的支出割合は、OECD平均が2.4%に対し、日本は0.7%(OECD統計・05年)と異常に低いことを考えると、公費負担を増やすことは当然です。
先に述べた国連障害者の権利条約は全世界6億5千万人を超える障害者の人権の確立とその生活の質改善のために障害当事者および支援団体、市民社会のメンバーが、最初の条約草案を起草した作業部会から特別委員会での最終段階の議論にいたるまで、条約策定全過程に参加し、そのまとめに大きく寄与したことが、内容にも生かされ国際的にも評価されています。
1月7日の国と原告団・弁護団の合意には政府の「障がい者制度改革推進会議」に障害者が参加し議論を進めていくことが含まれています。事実、改革推進会議のメンバー24人のうち14人は障害当事者や関係者の代表が選ばれ「障がい者総合福祉法(仮称)」制定に向けて議論を進めることが決まりました。私たちはこのことを評価すると同時に、単に形式だけではなく、内容面においても当事者の意見が尊重され、「法」に反映されることを望みます。そして13年8月を待つことなく、なるべく早い時期に「障害者自立支援法」を廃止し、新たに、障害者がその人らしく尊厳を持って生涯を生きていくため、つまり本当の「自立」のために住宅・所得保障・社会の整備などを含めた、すべての障害者を含めた「総合的な障害者福祉法」を制定するよう要求します。
(注1)2006年12月13日の国連総会で採択され、07年3月30日に81ヵ国と欧州共同体が署名し、08年4月3日エクアドルが批准し、批准国20ヵ国に達し、30日後の08年5月3日に発行した。日本政府は07年9月28日に署名しましたが、去まで批准はしていません。
厚労省は海外委託技工を認可した真意を示せ
国民の口の中に入る歯科技工物に関しては、歯科技工士法で厳しく規制されている。歯科技工士法第17条には「歯科医師又は歯科技工士でなければ業として歯科技工を行ってはならない」とある。この法律により、無資格者は歯科技工を行ってはならず、行った場合は厳しく処罰されている。
ところが海外委託されている歯科技工物に関して、平成17年の厚労省の通知(「国外で作成された補綴物の取り扱いについて」平成17年9月8日(医政歯発第0908001号)3面掲載)では、歯科医師の裁量権にて、どのような形で委託しようが自由に技工委託先を選べるとした。
これまで歯科医師の裁量権を狭める解釈を押しつけてきた厚労省が、この時とばかりは、大いに奨励するかのごとく異例の通知を出した。
これにより歯科技工士法は国内製作の歯科技工物のみ適用され、海外で製作された歯科技工物については、法律より格下の通知により無資格者の製作も黙認。また、国内製作のものは厚労省認可の材料しか使用できない。平成20年3月、アメリカにおいて中国で製作された歯科技工物から鉛が検出されたとのニュースがあった。これより先、平成17年に厚労省が行った調査では、日本国内において中国で製作された歯科技工物の約15%が指示と異なる状況にあること判明したが、厚労省は「問題なし」と結論付けた。しかし、今年2月6日のTBS系テレビの報道で、海外委託技工物に金属アレルギーを起こしやすいニッケルや国内では使用禁止のベリリウムが含まれていることが判明。中国の中小歯科技工所では、中国国内の規格でこれらの物質は認可されているので従来通り使用して日本に輸出していると言明した。
海外で製作された歯科技工物を使用し、人体に影響が出た場合、その責任はすべて歯科医師がとれと言わんばかりである。歯科技工物輸入の際の検査は、100円ショップの物品と同様の取り扱いで、農畜産物でさえある種々の検査もない。これでは資格や歯科技工設備、材料などが厳しい規定されている歯科技工士法の存在意義が失われてしまう。
平成17年を機に海外委託技工が増加の一途をたどっているが、統計には出てこない。なぜならば、歯科医師が直接海外委託するものよりも一旦国内の歯科技工所が診療所から受注したものを海外の歯科技工所へ発注しているものも多く、場合によっては歯科医師がその実情を知らず国内製作のものと思い、患者に提供しているものもあるという。
「この現実を患者の立場で改めよう」と、歯科技工士の有志が訴訟に踏み切った。一審、二審では、歯科技工士法で定められた歯科技工士の業務独占を公衆衛生の保持を目的としたものであることを認めたものの、個々の歯科技工士の法律上の利益を保障したものではないとして、原告敗訴となっている。現在は最高裁に上告し受理されている。内容は、歯科技工士制度のあり方の確認と、それをもとに海外委託技工を止めさせていく政策形成訴訟の形態をとり、最終的に行政的、法的な解決を目指しているものである。
二審では、裁判長から進行協議を提案され、厚労省と法務省の担当者と裁判官、提訴代理弁護士とで3回にわたり協議をしている。この中で、裁判長は双方に対して「いろいろ資料を読ませていただいた結果、海外委託技工には問題があります」また、「国民の安全を守るという点は厚労省も同じでしょう」とも発言した。この種の裁判で進行協議が提訴者の申し出でなく、裁判長の提案でなされ、また、そのような発言も異例のことである。しかし、進行協議を提案した裁判長が審理途中で変更され、海外委託技工の問題点に言及されることなく、原告の敗訴となった。
厚労省が意地になってでも海外委託技工を認める理由は何であろうか。国内では歯科技工士の高齢化が進み、若者の技工離れも急速に進んでおり、歯科技工士数は減少している。増加する歯科医師に対して急激なアンバランスが生ずることを見越しているのだろうか。あるいは、かつて日米であったような密約なるものが委託国との間であるのだろうか。この度のテレビ報道で厚労省はどう動くのだろうか。見えないところに厚労省を動かした大きな力がありそうだ。まさか将来、医科の検査が海外委託になることはないと思うが、厚労省の腹の中は見えず、そうならないことを祈る。たとえエイズや水俣病のような被害が出て、訴訟で厚労省の敗訴となっても認可の通知を出した役人は罰せられることもない。厚労省は国民の血税で補償しても戦闘機一機分より安いぐらいの軽い気持ちなのだろうか。
貴重な国民医療費の海外流出を防ごう
〜高薬価等の是正と真の社会保障充実に向けて
「医療費の増大は財政赤字を招き、ひいては増税を余儀なくされ、景気の悪化を招く」といった主張があります。この主張の源は1980年代の「医療費亡国論」ですが、長年、政府・与党がこの論に則り医療費抑制策を続けてきた結果、今日の「医療崩壊」を招きました。
協会・保団連は当初より一貫して医療費抑制策に反対し、国の責任で拡充することを求めてきました。昨年の衆院・総選挙では、「抑制継続か拡充か?」が大きな争点となり、政権交代の大きな要因となりました。
鳩山首相は初の所信表明演説で「医療費・介護費抑制策の方針を転換する」と述べましたが、次年度政府予算案、とりわけ診療報酬改定率などをみると不安になります。医療や介護にまわすお金がどれくらいあるのか?無駄の排除と「埋蔵金」だけでは安定した財源を確保するのは難しいでしょう。私たちは無駄な公共事業費や防衛費の削減や大企業にヨーロッパ並みの税・社会保険料負担を求めることで財源が作れると提案しています。
一方で、増加する国民医療費を削減する手段の1つとして、諸外国と比較して高い薬、材料、医療機器の価格の圧縮を求めています。現在は医療機関の購入価格と薬価の差はほとんどなく、薬によっては逆ザヤになるものもあります。また、2007年5月16日に開催された「財政制度等審議会」に財務省が提出した資料によれば、心臓ペースメーカー価格は、諸外国の2〜7倍、PTCAカテーテルは2〜8倍にもなっており、医療機関の経営を圧迫しています。ここを圧縮するだけでも数兆円の医療費削減が可能です。
ご存じのように、私たちが日常使用する医療機器や医薬品は輸入に頼っています。直接患者に使用する医療機器は安全基準が厳しく開発に大きなリスクを伴います。医療機器の約5割が輸入品です(輸入金額は2009年7月時点で1752億919万8000円。全体の48.6%。厚生労働省 薬事工業生産動態調査より)。医薬品国内トップの武田薬品の連結売上高は世界の16位です。同じ薬が高く売れる日本は外国の製薬会社にとってはおいしい場所なのかもしれません。厚生労働省は諸外国に比べて高い薬価、材料、医療機器の価格を設定しておきながら、一方で「医療費が増えたら大変だ」と国民の医療費負担を増やしてきました。貴重な国民医療費が海外に流出することを防ぐためにも、早急な価格是正が必要です。
また、将来の医師過剰を心配することなく医師を養成し、医療の質を向上させ、医師、歯科医師がゆとりをもって仕事をできる環境を作ることが、創造性を高め、高度で安全な医療を提供するためにも必要です。
政権交代が実現し、「医療再建」の方向に踏み出したばかりです。2008年の厚生労働白書には医療・介護など社会保障の総波及効果や雇用誘発効果は全産業の平均より高いことが指摘され、「有効需要や雇用機会の創出と相まって、経済社会の発展を支える重要なもの」と明記されています。医療にお金をまわすことは、国民の健康増進ばかりでなく、景気回復にもつながります。
ワクチン接種は行政(保健所)の責任で
新型ウイルスがメキシコに始まり急速に全世界に広がりました。新型インフルエンザワクチンの接種が、その副作用について十分説明が無いままに、10月より医療従事者をはじめとして始まりました。
この接種は、新薬承認の第二段階に相当する臨床試験で、副作用が十分に解明されていません。ワクチンの製造も卵黄を使用しており、量的に十分製造できず、受託医療機関でも満足に供給されていません。日本もワクチンを早く大量に製造するために、安全性を確かめながら外国のように免疫補助剤の使用での製造も検討する必要があります。接種の段階も国の方針と違い自治体によりバラバラでした。防腐剤が混入しない一人用は妊婦のみに使用され、多くの人は防腐剤混入の2人用、20人用バイアルが使われます。20人用バイアル注射液を有効に使用するとすれば予約制をとり、もし不可能な場合、残った液は使用されずに廃棄されています。さらに、液を吸引する際の二次感染の可能性も否定できません。中国地方では、休校や学年・学級閉鎖が10月20日小中学校計207校に達し、1週間前と比較して4.6倍になり、7月以降の推定患者は160万以上ですが、死者は26人と、致命率は季節性の0.1%を大きく下回っています。
国立感染症研究所の最近の調査で、10月19〜25日の一週間の推定患者が114万人と、初めて100万人を突破し、そのうち7割が5〜14歳と報告しています。入院患者の半数以上は持病がなく、子どもは重症肺炎や脳症が多くなっています。小児科医が不足している中、対応できない自治体も出現し、広島市でも内科医の応援を求めています。5月以降、「発熱外来」を設置したところでは患者さんが殺到して、その機能を果たさなくなり、一般病院が対応した経緯があります。広島市の夜間も子どもが病院に殺到しています。さらに、予防注射の接種順位や回数など厚労省の方針が何度も変わり診療現場は混乱しています。
長年の医療費抑制政策が原因で、病院は病床削減や閉鎖に追い込まれています。特に感染症専門病床がこの4年間に683医療機関の1万3967病床から1万606病床にまで減少しています。また、病原体を院外に拡散させない「陰圧病床」も減少しています。
さらに、本来予防活動の先端をいくべき保健所が統廃合され、地域住民から遠い存在になっています。特に色々な病気を持った患者が治療に専念している病院では、予防接種を受ける健康な人に病気がうつる可能性が否定できません。このような病院では、インフルエンザワクチンの接種はすべきでありません。医療機関は接種者の年齢別、学年別、基礎疾患の有無などの報告、副作用の報告も義務づけられており、厚労省は医療機関に負担を強要しています。こうしたことは行政がすべきであり、ワクチン接種は病人が来ない病院外の保健所、保健センターで行うべきです。新型インフルエンザは新しい病気なのでワクチン接種の効果はどの程度あるかわかりませんし、副作用の懸念もあります。接種費用の負担も重荷です。
今、さらに、死亡率の高い鳥型インフルエンザの発生が懸念されています。鳥型は、新型インフルエンザと違い感染力が高く、致命率が非常に高く、以前の発生したSARSと同等の対応が迫られます。
今回、インフルエンザが発生した5月以来、厚労省は試行錯誤しながら、水際作戦、ワクチンの製造、安全宣言の発令、ワクチン接種の対象順位等の方針を出してきました。これらの経験を踏まえて、自公政権の政策の結果起った医療破壊の最中、不十分な診療体制(医療従事者、医療設備、病院病床等)のもとで、病院内の「陰圧病床」か、SARSを克服したベトナムでの開放病棟かのどちらが有効か検証する必要があります。
常に発生する可能性のある新型の感染性疾患に対応出来る体制(感染病院の建設等)を構築する必要があり、自治体の責任でなく国が先頭にたって国民に対して責任を持って対応する必要があります。
二大政党時代と国策の行方は
このたびの衆議院選で日本は再び二大政党時代になった。日本の場合、二大政党政治は必ずしも政策がうまく運ぶとは限らない。民意がきっちりしていることが重要である。そして、もっと重要なことは二大政党の間に信頼関係があってこそ両者が知恵を出し合い将来に繋がる政策が行える。
今われわれは、戦前の二大政党時代を詳しく検討する必要があるのだが、ここに簡単にまとめてみた。1924(大正13)年、衆議院選で護憲三派が勝利し、第一党憲政会総裁の加藤高明が組閣した。その後、憲政会は立憲民政党となり、民政党と立憲政友会の二大政党時代が始まった。
一方の政党が決めたことを他の政党が廃案にするなど、両者の足の引っ張り合いが続いた。政友会は積極的な財政路線で、大陸進出に意欲的で、民政党は緊縮財政路線で協調外交と、両者には相当な開きがあった。1940(昭和15)年には二大政党政治が終焉となり、1941年の東条政権となった。
二大政党が批判合戦をしている間に軍部が台頭し、国民は軍国主義の道に引きずり込まれていった。
今の日本には、政権が担えるような軍隊があるわけではない。また、政治に影響を与えるような天皇の力が強いわけでもない。二大政党が協力して、国民の経済や福祉を向上させるような道をたどれるか否かが問われる。
政治体制は変わったが、少子高齢社会が改善されるかどうかわからない。工場生産量が増えて、輸出が伸びているわけでもない。株価が上昇してもいない。税収が増え、国債残高が減っている状態でもない。経済は低迷したままである。いや、もっと悪化して、雇用不安が増大するので、補正予算を追加する話も出ている。
二大政党が政権交代した場合、外交方針や社会保障関係などが大きく変わる場合がある。しかし、政権交代がある度に、国民に多大な犠牲をもたらすものであってはならない。
政策が変更されるたびに、官僚の作業が増して、官僚は疲弊する。そういう状態では、結局のところ政策は十分に果たせない。医療機関や介護福祉施設としては、建物を建設してスタートした事業が、後日廃止されるような状態にはしてもらいたくない。制度を改変するのも程度ものである。
医療費をめぐる論争は、厚労省と自民党時代の経済財政諮問会議の民間議員主導で行われた事に問題があった。外国と比べ、医療費がGDP比率でみて低いからという理由だけで、日本の医療費をもっと高くしていいということではないが、高齢化の進展や、医療技術の高度化を考えると、医療費総額を引き上げるのは必然である。問題は公費負担がどこまで許されるかである。
これから民主党政権の具体的な展開となるわけだが、どのようなことになるか、民意の役割が重要であろう。自民党時代から民主党時代への変換が諸事業にどんな影響を与えるか見守る必要がある。
新連立政権は消費税を引き上げるな
第45回衆議院選挙で自公政権は大敗し、民主党中心の連立政権が誕生しました。しかし、消費税については、自民党と公明党は景気回復時に、民主党は「4年間は引き上げない」としながら、いずれは引き上げを表明しています。そもそも消費税は導入時点と引き上げ時点も総選挙で国民の審判を受けていません。1989年4月から3%で、97年から5%に引き上げられました。
消費税は第1に、所得の少ない人ほど負担が重くなるという逆進性で、さらなる貧困を促進します。憲法の前文の「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ平和のうちに生存する権利を有する」ことに反しています。第2に、大企業を優遇するもので、消費税を満足に負担していません。原料には消費税はかかりますが、中小企業と違い販売価格に転嫁出来ます。輸出品には税を上乗せ出来ないという理由で、仕入れ時に払った消費税は「輸出戻し税」として返還されます。大手10社でその額は1年で1兆円にもなります。第3に、97年に3%から5%に引き上げられた時に日本経済は大不況に落ちいったように景気を破壊するものです。
税金の徴収は、憲法13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)、14条(法の下の平等)、25条(生存権、国の生存権保障義務)、29条(財産権の保障)で税金の応能負担原則を要請しています。この原則から@所得税・住民税は累進課税、A最低生活費、生存権的財産は非課税、B税負担能力の低い貧困者は軽い負担で、利子・配当・不動産などの負担能力が高い資産所得には重い負担という考えが具体化されます。 税金の使い方でも、憲法前文・25条の平和・生存権の規定から、国民の平和と福祉のために第一義的に使用すること要請しています。
消費税が「福祉目的税」として導入されて以来、年金・老人保健・健康保険・生活保護・雇用保険・失業保険・介護保険・障害者自立支援と国民の負担は増えています。さらに、社会保障費の自然増について、02年は3,000億円、03年から毎年2,200億円が削減されています。消費税導入から20年間に213兆円集め、法人税減税額は約182兆円と、消費税法第2条のいう福祉のためでなく、法人税減税分の穴埋めをしており、消費税は大企業のためであったことが明らかです。
自公政権の元での経済財政諮問会議は常に消費税だけの引き上げを諮問し、税率を10%台にしています。
現在、非正規労働者は34%を占め、国税庁の調べで年収200万円以下の労働者は1,000万人に達しおり、大企業の従業員でも10年前と比較して所得は下がっています。さらに、生活保護者も増加しており、世界経済危機で、日本経済も深刻な不況に陥っています。いま、消費税を値上げすれば、さらなる景気を悪化させ、国民の生活を直撃します。
また、総務省調査によれば、09年5月のサラリーマン世帯の月額消費支出(食料費、水光熱費など)は31万7,195円となっています。この数字に消費税5%が含まれているとして計算した場合、支出の本体は30万2,100円、消費税が1万5,100円という内訳となります。消費税率が10%になった場合、支出の本体を同額として、消費税は3万210円となる計算です。
消費税の引き上げを求めるのでなく、資本金10億円以上の大企業は国の予算の3年分に相当する230兆円も内部留保として貯めこんでいます。このように資力のある大企業の法人税を元の40%に戻すことで4兆円を、配当利子をはじめとする不労所得の優遇税制10%を20%に改めることで1兆円が確保できます。さらに、輸出戻し税を廃止すれば、4兆円が確保できます。所得税は「単純累進課税」でなく「超過累進課税」が原則です。税の応能負担原則からすれば、83年まで75%であった最高税率を37%まで下げたものを43%に戻せば、さらなる税収入が確保出来ます。歳出では、聖域である軍事費5兆円の削減、当面必要のない公共投資の削減、米軍へのおもいやり予算を廃止すれば、消費税は当面5%の維持は出来る筈です。
国民の目線で医療崩壊をただせ!!
2009年1月から6月の上半期で日本人の自殺者が1万7760人となり、年間数は、過去最高を軽く突破すると発表された。何故、日本は住みにくい国になって来たのか。
選挙前の党首討論を聞いてみても、自民党は、経済優先の政策ばかりであった。国民は日々の生活が安全で安心して暮らせる社会を希望しており、政府と国民の間に大きなギャップがあるように思える。
02年から始まった小泉・竹中の低医療費政策、すなわち日本の医療費33兆円はGDP比2006年、8.2%で、世界的には先進7ヵ国中最低、その他の国を含めても30ヵ国中21位と極めて低いレベルである。さらに社会保障は、02年から08年までの7年で1兆6200億円削減されたことにより、国民生活が不安定になり、医療崩壊が一気に表面化した。
低医療費政策をあらため、国の責任で社会保障拡充を
政府・財界は産業界に投資すれば社会は良くなると考えているようだが、医療・社会保障を拡充することは、国民の命と健康を守ることだけでなく、国民の生活充実と経済の健全な発展をもたらす極めて有効な政策で、いま国民が一番求めていることである。政府は社会保障費自然増2200億円を削減し、4回連続の診療報酬マイナス改悪、後期高齢者医療制度(75歳以上の高齢者だけを別の医療制度を独立させ、死ぬまで保険料を徴収する)を導入し、また、障害者自立支援法(障害者が福祉サービスを受けるとき原則1割負担するが、障害が重いほど利用料が増える)を導入。療養病床削減、リハビリ日数制限など医療崩壊を助長する政策をとり続けている。
また、04年から卒後臨床研修が義務化された。ところが、指定病院であれば、全国のどこの病院でも研修が受けられるため、大学病院が敬遠され、大学が派遣していた自治体病院で医師不足が起こった。とりわけ政府は、08年から「地方公共団体財政健全化法」で病院の赤字を自治体本体に繰り入れることを義務化し、「病院潰し」を行い始めた。その対策として、09年、医学部定員を693人増やすが、診療科の偏在が起きないような対策が望まれる。
先の郵政民営化はニュージーランドで失敗し、今回の医療・社会保障削減はイギリスで失敗している制度であるが、何故同様の失敗を日本が繰り返すのだろうか。90年代後半からアメリカ政府が毎年日本政府につきつけた「年次改革要望書」で、医療分野の規制緩和、医療への株式会社の参入、混合診療解禁を求めてきた。日本は経済財政諮問会議が中心になり、低医療費政策を政府に答申している。
日本の社会保険給付費(公的医療費)はGDP比18.6%であるのに対し、社会保障を経済の中心に位置付けているヨーロッパ(EU)は、ドイツ28.4%、フランス29.1%と高く、また、日本の企業負担は社会保険料4.4%で、ドイツの6.9%、フランスの11.1%と比べると低い値である。政府が社会保障への公的医療費支出を、大企業がEU並みの保険料を負担すれば、医療分野でも10兆円規模の予算増になると言われている。
歯科医療の危機打開に向け、医療費の総枠拡大を求める
一方、歯科に目を転じてみる。
平成16年「国民基礎調査」によると、歯に症状がある人144.6万人のうち、48.7万人が歯科を受診していない。民間調査によると、受診しない理由は「面倒」(49.5%)、「仕事が忙しい」(41.9%)、「お金がかかる」(23.1%)などとなっている。
歯科医療界は日本歯科医師会を中心にして、「混合診療」に活路を求めるよう指導している。この施策は「保険で高額医療も治療してほしい」と求めている国民の願いに背き、憲法25条に基づく国民の受療権の否定にもなる。実際、総収入に占める自費診療の割合は07年の全国平均12.2%、東京23.3%である。総収入が減少傾向にある中で、自費診療割合は増加している。ただ、医院数増加中に、自費診療の拡大で歯科医療の活路を見出すことは可能だろうか。
厚労省は97年から10年間、歯科医院が12%増加しているにもかかわらず、歯科医療費を2兆5000億円台で横ばいに抑制している。また、診療報酬が73項目20年間据え置かれている。これに対して日本歯科医師会は「財源がない」という論評で、ほとんど有効な手立てをしていない。
さらに、厚労省は歯科医院経営が困難であっても、保険診療だけでなく、自費診療も含めて採算が合えばいいとする「トータルバランス論」で歯科の低医療費政策を正当化している。そこで、「保険でより良い歯科医療」を充実させるためには、政府の低医療費政策を転換させ、総医療費の歯科医療分を欧州水準8.4%に引き上げる必要がある。すなわち、患者窓口負担軽減に5000億円、自費診療の保険導入に5000億円(推計)、診療報酬の10%引き上げに2500億円、計1兆2500億円投入すれば誰でもお金の心配なしに安心して歯科医療が受けられ、歯科医院経営も安定できると試算されている。
08年厚生労働白書によると、医療・社会保障に資金を投入することは、それが消費を増大させ雇用を生み出し、所得増を呼び日本経済を牽引する。なかんずく社会保障の波及効果は全産業平均よりも高いことがわかった。
政府は、法人税減税、消費税還付など、輸出企業優遇をやめるべきで、医療・社会保障で内需を拡大することによりGDPの6割を占める個人消費を活性化する方向に経済構造を転換すべきである。
原発はいらない
中国電力は、瀬戸内海国立公園に浮かぶ山口県上関町長島の田ノ浦にある美しい入り江の埋め立てを強行しようとしている。また、中国電力の筆頭株主の山口県は、数々の問題を残したまま、原発建設予定地である田ノ浦湾の埋め立てを許可してしまい、政府と中国電力によって原発建設が強行されようとしている。田ノ浦からわずか4キロたらずの海を隔てたところにある祝島は、福山市・鞆の浦と同じように、万葉の時代からの歴史がある海に生きる人たちの島だ。2009年度第12回日本自費出版文化賞の特別賞を受賞した那須圭子さんの写真集「中電さん、さようなら─山口県祝島原発とたたかう島人の記録─」(創史社)に、命と生活を守るため一切妥協することなく原発計画に体を張って反対し続けてきた祝島島民の28年に及ぶ戦いの歴史が刻まれている。
原発建設によって美しい瀬戸内海の自然は破壊され、貴重な生き物の命が奪われ、周辺住民の生活は都会の電力をまかなうために犠牲にされる。原発からは海水より7℃以上高い温度の大量(太田川の流量の2倍以上に匹敵する)の冷却水(海水)を排出し続け、ひとたび事故が起きれば周辺地域はもちろんのこと、最悪の場合にはほぼ日本全土と朝鮮半島から中国大陸まで放射能で汚染される。原子力発電に伴って生じる処理の方法のない放射性廃棄物が大量に蓄積され、それを青森県六ヶ所村の地下に半永久的に埋め込もうとしているが、現在、大変な費用がかかる最終処理の危険な作業段階で行き詰っている。オバマ米政権は、使用済み核燃料再処理施設と再処理で取り出したプルトニウムを燃やす高速炉を米国内に建設しないことを決め、環境にやさしく、新たな雇用を生む太陽光発電などのグリーンエネルギー政策を推進している。
CO2削減のために原子力発電が必要だと宣伝されているが、CO2を出さないのは核分裂反応の段階だけで、原発建設はもちろんのこと、ウラン採掘、燃料製造・運搬、廃棄物の貯蔵と再処理など、あらゆる段階で大量のCO2を排出している。さらにすべての段階で作業に従事する人は外部被曝と内部被曝にさらされ、とくに原発で働く人の被曝による健康被害は世界的に問題となっていて、癌、特に白血病や骨髄の癌、生殖器の癌などが多発している。放射能汚染物質による内部被曝の問題は、原発従業員や周辺住民だけでなく広範囲に及ぶ汚染物質の世界的な拡散によって、発癌の原因となっているとの指摘もある。
チェルノブイリの事故もスリーマイル島の事故も、原因は機械的なトラブルではなく、作業員の操作ミスという人為的なものだった。すなわち、どんな機械でも必ず壊れるし、人は必ず操作を間違えるのだ。また、日本は地震の多発地帯で、現在、全国にある原発所在地や、原発建設予定地周辺にも活断層がある。すでに上関町は安芸灘大地震の発生周期に入っており、また至近距離に米軍岩国基地があって、航空機事故の可能性や航空機などを使ったテロの危険性もあり、ミサイル攻撃の標的にもされる。ひとたび原発で重大事故が発生すれば、もはや人間の力では対処の方法がない。このようにきわめて大きなリスクをカバーする保険は存在しないため、政府は国内の原発事故では電力会社が上限1200億円で免責される原子力損害賠償法というものを作ってまで原子力発電を推進しようとしている。
原発でつくられる電気のコストは、フランスに依頼している使用済み核燃料の再処理や、六ヶ所村に押し付けた高レベル放射性廃棄物の処理などにかかる費用を含めると、風力、火力、水力発電よりもはるかに高価となる。原発建設は、自然を破壊し、命と健康と周辺住民の生活という取り返しのつかない高価な代償を払ってまで強行すべきものではない。
一方、太陽エネルギーは、すべての再生不能エネルギー資源の埋蔵量から計算される総エネルギーの何十倍ものエネルギーを一年間でまかなってくれる。国民がクリーンエネルギーによる電気を選択できない日本では、まず節電が大切で、オール電化住宅などに騙されてはいけない。オール電化住宅は、一旦停電になれば何もできなくなり、電磁波による健康被害の危険もある。原子力の問題は、私たちひとりひとりが毎日の生活の中で考えなければいけないことであり、どんな社会でどんな生き方をするかということだ。社会が持続可能であるために、スウェーデンを中心に活動している世界的な環境団体ナチュラル・ステップは、@地下資源を掘り出さないA化学物質を環境に増やさないB自然を物理的に壊さないC人間の基本的ニーズを満たすという4つの条件を提唱し実践している。日本に原発はいらない、造らせてはいけないのだ。
原爆症集団訴訟の一括解決と認定制度の改善を求める
原爆症認定被爆者は1985年以降、2,000人で横ばいであった。それは「原因確率表」という早見表に従って、予算枠を遵守するための審査が行われてきたためである。2003年4月から、認定申請を却下された被爆者が起こした原爆症集団訴訟は、2009年5月28日の東京高裁判決で国の18連敗となった。舛添厚生労働大臣は上告をせず、司法判断を尊重して8月を目途に認定制度のさらなる改善をはかることと、集団訴訟の解決を目指すことを表明した。6月22日には対象疾患として「放射線起因性が認められる甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変」が復活した。
集団訴訟の連敗が続く中、安部首相の指示で昨年4月から新しい審査方法が始まった。1ミリシーベルト以上の被曝に相当する3.5km以内の直接被爆者と100時間以内の中心部への入市被爆者を積極認定の対象とすることとなり、さらに新しく心筋梗塞が原爆症に加えられた。
認定確実なケースが優先的に審査され、今年3月末までの1年間で前年の23倍にあたる2,969件が認定、却下は脳梗塞、狭心症、脊椎疾患など62件で、認定率はそれまでの20%前後から98%に跳ね上がった。認定疾患の内訳は、癌92.3%、白血病5.8%、心筋梗塞1.1%、白内障0.7%、副甲状腺機能亢進症0.1%であった。しかし、申請疾患でもっとも多い癌の審査会は、月2回しか開催されないため、8,000人が審査待ちの状態にあり、審査結果が届く前に亡くなられる被爆者が続出している。
大阪、東京高裁の司法判断では、内部被曝の影響も否定できないとして、認定条件の拡大を求めるとともに、対象疾患を肝機能障害、甲状腺機能障害、疼痛性瘢痕、ガラス遺残などに拡大した。
原爆放射線の影響はいまだ未解明であり、被爆後50年を経過しても、前白血病とされる骨髄異形成症候群が増加している。原爆放射線の影響は若年被爆者ほど大きく、被爆時10才以下の男性の80%、女性の90%が生存していることから、長崎大学の関根一郎教授は、被爆者全体に発症する癌はまだ3分の1しか現れていないと述べている。長崎大学原研病理では被爆者の剖検標本にアルファー線の飛跡を確認しており、内部被曝の影響を解明する研究が進められている。
被爆国日本の政府は、被爆者の援護と被爆の影響の研究にこれまで以上に努めなければならない。
集団訴訟の結果、国は司法判断に従ってこれまでの認定制度の不備をあらため、大きく制度を変更することとなる。原爆症集団訴訟は、さまざまな病気に苦しんでいる被爆者を代表した原告たちの命を賭したたたかいであり、これ以上裁判を長引かせることは許されない。国はこれまでの原爆症認定制度の不備を被爆者に謝罪し、敗訴原告も含めた、原告団が納得できる一括救済で、誠意をもって早期解決をはかるべきである。
さらに、広島で被爆者の医療を担当している私たちは、原爆症認定制度に関して以下の改善を求める。
1.認定審査会の開催数を増やし、現在8,000人といわれる審査待ちの状況を早急に解消すること。
2.悪性疾患はすべての被爆者を認定対象とし、申請に際して被爆者側に立証責任を科している医師意見書を廃止し、診断書の提出のみで迅速な審査が行われるようにすること。
3.在外被爆者が原爆症認定申請をする場合には本人確認のため来日しなければならない要件がいまだに残っており、来日できない重症者が排除されている。被爆者手帳、健康管理手当と同様に、現地からの原爆症認定申請ができるようにすること。その条件づくりのため、現地での医師講習会などを行うこと。
急がれる「社会保障基本法」
昨年9月のアメリカの金融破綻により世界に拡がった経済危機は、恐慌状態を招き、日本にも壊滅的影響を及ぼしている。この恐慌ともいえる経済危機は、新自由主義政策によって生み出された貧困層に更なる打撃を与え、憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」も有名無実のものとなり、生存権すら脅かされている。
現在の国民の生活状況は、1990年代後半より生活困窮者、自己破産者、ホームレスの増大が見られ、昨年の3月時点の生活保護世帯は112万世帯(約156万人)であり、日本の生活保護の捕捉率(生活保護基準以下の人の実際に生活保護を受給している人の割合)は2割弱となっている。即ち、約780万人を越える生活保護必要困窮者の存在が考えられる。
OECDが2006年に出した「対日経済審査報告書」によれば、日本の相対的貧困率は、OECD加盟国17ヵ国中、アメリカについで2番目に高いことが示されている。因みに07年度の推定貧困世帯数は1165万世帯にもなっている(後藤都留文科大学教授論文より)。このことは所得格差の割合がアメリカに近づいてきていることであり、ひょっとすると現在はアメリカを抜いて貧困率が一番高くなっていることも予想される。
一方で、日本には1400兆円を越えるといわれている個人資産があり、所得格差の開きはより拡大しており、貧困層子弟の教育機会の均等化が崩れ、貧困層の固定化と疎外感はより増強されてきている。
これを裏付けるように、毎年3万人以上の自殺者が10年連続で続いており、最近は餓死者まで出ている。この自殺の原因として生活苦・病苦が年々増加し、しかも、生活苦による家庭崩壊、一家無理心中、自暴自棄になった若者の無差別殺人など、嘗て世界から羨望された世界一安心と安全であった日本の姿は見る影も無い。
このような日本の姿を招いたのは小泉内閣に代表される、憲法25条を蔑ろにした失政によることは明らかである。このような失政を繰り返さないためにはどのような政権党になろうと、しっかりとしたセーフテイネットとしての社会保障を国民に確約させる法律が必要である。その法的規制として「社会保障基本法」の制定が急がれる。
今、京都府保険医協会を中心としてこの「社会保障基本法」制定の推進運動が始まっている。この運動には、都留文科大学教授後藤道夫氏、鹿児島大学教授伊藤周平氏等が賛同し、京都府を中心とする弁護士グループもこの運動に参加している。
今年の4月25日の日経新聞朝刊に「社会保障基本法の訴え、国の責務で生活の安定」をという記事が載り、この基本法が制定されれば国は財政的な裏付けが求められ、これまでの様に「財源が無いから社会保障の充実は先送り」には出来なくなると論じている。
このようにマスメデイアも注目しだした「社会保障基本法」の制定に賛同し、国民運動にまで高め、総選挙での争点にする必要がある。今、日本国民の誰もがこのままでは良くないと感じている。この「社会保障基本法」の制定に希望を託したい。
※法案全文は京都府保険医協会のホームページから見ることができます。
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